[vol.3]ニッチテクニカル – デジタルミキサーのすゝめ –

テクニカルディレクターによるマニアック技術コラム

このコラムはAZAのテクニカルディレクター 木村 壮平が映像、音響、ネットワークに関する様々な情報発信をしていく記事です。

第3回テーマ
デジタルミキサーのすゝめ - ミキサー比較試聴会レポート -』

AZAは映像機器のレンタル会社とイメージを持たれているかと思いますが、音響もやっているんです。

イベントにおいて、映像と音響は切り離せない関係にあります。特に近年のイベントでは、映像と音響が密接に連携することで、より深い没入感と感動体験を演出することが可能になっています。

イベントの現場に深く関わる中で、「いい音とは何か」を改めて問い直す機会が増えています。
仕様書に書かれたスペックだけではわからない音の違いを、どう捉え、どう使い分けていくか。

今回は、2025年2月に開催された一般社団法人 日本音響家協会さん主催『デジタルミキサー比較試聴会』に参加した様子を通じて、そんな視点から少し綴ってみたいと思います。

“聴き比べる”という体験

音響メーカー各社によるスピーカーの比較試聴会や、interbeeでの視聴会が開催される中、一風変わったデジタルミキサーの比較試聴会が開催されました。それが『デジタルミキサー比較試聴会』です。

実際の現場で使用されるデジタルミキサーに焦点を当てた比較試聴会で、会場には国内外6メーカーのミキサーが並びました。共通の音源とナレーションを用い、機材ごとの音の違いを耳で確かめるというスタイルで進行されました。
この6メーカーが同時に比較できるのはこの試聴会だけかと思われます。

<出展機種一覧>

ヘッドアンプの違いやコンソールが変わるだけで音も大きく変わることを耳で直にとらえることができました。

ハイスペックが「正解」なのか?

“聴き比べる”だけでなく、“見比べる”ことの重要性も、今回の試聴会を通して再認識しました。実機を前にすることで、性能だけでなく、設置性や操作性といった運用面の確認も行えます。
これまでの現場経験とも照らし合わせながら、
「これだったらこういう場面で使えそう」
「こういうケースではこっちの方がいいな」
などと色々と想像をめぐらせるのも、こういった視聴会の楽しみ方なのかもしれません。

当然ながら、用途や現場規模によって選ぶべき機材は異なります。
例えば、大規模会場やフルバンド編成のステージでは、入出力の豊富さや多チャンネル処理に対応できる大型のハイスペック機が求められます。
一方、設営・撤去のスピードが重視される現場や、設置スペースに制限のある環境下では、“サイズを超えた機能性”があるミキサーが必要になります。

ちなみに最近のAZAでは、以下のような機種をよく使用しています

YAMAHA DM3 Dante

そのコンパクトなサイズにも関わらず、XLR入力12系統、XLR出力8系統を備え、高音質での配信や、映像卓の音声集約に大変重宝されています。

YAMAHA DM7compact

その名の通りQL1とほぼ同じサイズながら、機能が豊富です。

音響に対するプロとしての向き合い方

音響のプロとしてイベントテクニカルに従事するにあたって、このように実機を見てパフォーマンスを検証する時間はとても大切です。スペック上の条件を満たしているからといって、それが現場での“正解”とは限りません。会場の規模や特性、またはオペ卓周辺の環境なども鑑みて、パフォーマンス、ハードウェアの規模感共に最適なモデルを提案するべきだと考えています。
そういった意味でも、この試聴会はそういう生きた情報を得る機会となりました。

選定から運用まで、機材に“意味”を与える仕事

AZAの機材ラインナップは、単にスペックの高い機材を揃えるのではありません。
それらをどう扱うか、どんな現場に持ち込むかを含めて考える
そんな視点を大切にしながら、日々の提案・運用に活かしています。数々の現場での経験や、地道な実機検証を通して得た“生のデータ”を、サービスの品質に反映していくこと。それこそが、AZAの提供する価値のひとつだと考えています。

音響は、数値や型番だけで語りきれない世界です。
だからこそ、こうした機会を通じて、音に触れ、考え、選ぶという姿勢をこれからも大切にしていきたいと思います。

必要なときに、必要な音を届けられるように、AZAはこれからも現場に根ざした音響を追求していきます。

一般社団法人 日本音響家協会

https://www.seas-jp.org/

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知識と現場経験豊富なわたしたちにご相談ください。
30年間イベント現場をサポートしてきたAZAは、豊富な知識と現場経験を蓄積しています。
お客様から高い評価をいただいている迅速かつ柔軟な対応力で、プランニングからオペレーションまでトータルにサポートいたします。

記事を書いた人

木村 壮平

2007年入社 テクニカルディレクター|長年テクニカルオペレーターとして様々な現場で活躍。現在ではテクニカルディレクターとして高度な技術が求められる大型案件のシステムディレクションを行う。社内の技術アドバイザーとしての役割も担っている。